高級素材、煤竹
耳掻きの素材では、煤竹(すすだけ)と呼ばれる素材が非常に珍重されます。
煤竹は伐採後、数十年から百年以上の間、囲炉裏や屋根裏などでスモークされた竹材の事で、非常に高価で長さや太さなど、物により5千円ぐらいから数十万円ぐらいで取引されます。
減り続ける煤竹
煤竹は、主に藁葺き屋根の葺き替えや解体などで買い取られていきます。耐震性を問われる現代、わざわざ古いわらぶき屋根の葺き替えを行う家は少なく、これからは煤竹は減り続けていきます。
藁葺き屋根は殆どは釘を使わずに縄で縛って作り上げるので、竹はほとんど加工されずに綺麗な竹のままで残ります。また、縄で縛ったところとそうでないところで出来る自然な陰影も、人気の理由です。
煤竹と間違えやすい黒竹とは?
黒竹は製品で見ると煤竹に似ています。しかし煤竹が燻されて黒くなるのに対し、黒だけの黒は最初からの色です。夏が終わり秋口までは緑色ですが、寒い冬が来ると少ない日光を蓄積しようとメラニン色素が増えて黒くなります。黒竹は生えているときから黒いのです。
そして製品表面の艶(つや)は加工段階でバナーであぶった時ににじみ出てくる油成分です。この油成分が適度なしなりを生み出します。黒色は自然に出てきた艶なのでワックスみたいにはげたりしません。もちろん、黒竹も貴重な材料に代わりはありません。
無駄な力を逃がす煤竹
長い間、煤の中で乾燥され続けた竹は、非常に硬く適度なしなりがあるので耳かきには最適です。
指から耳のかかる力を適度に逃がします。また職人によって綺麗に整形された大事な先端部は、デリケートな耳の中で丁寧な仕事をします。この辺りが煤竹の人気の理由です。